学生さんを育ててきた? NO! 私が学生さんに育てられたんです。

株式会社ビジネスリテラシー代表取締役  神瀬邦久

■7年で大学を自主卒業。そして就職は?

本誌 「かみせ」とかいて、「こうのせ」と読む、珍しいお名前ですね。

神瀬 私は大阪生まれなんですが、もともとは熊本県の人吉にある地名です。なかなか「こうのせ」と呼んでもらえませんが、印象は強いみたいで、覚えてもらうには便利ですね。

本誌 神瀬さんは、関西地区で学生のための就活塾【就活ワークス】を主宰されています。職業は「キャリアコンサルタント」でよろしいんですか?

神瀬 私は自分では「就活講師」って呼んでいるんです。学生さんの納得内定をお手伝いするのが私の役目。

本誌 なるほど。ところで、神瀬さんは変わった職歴を経て、今の仕事についたとお聞きしました。

神瀬 よくご存知で(笑)。歴史を遡れば、大学時代からの話になります。ちょっと長くなるけれど、いいですか?

本誌 もちろんです。どうぞ!

神瀬 じつは私、大学に7年間通ったんです。3年留年して7年生の3月末、成績表を見たら、単位がまったく足りない。学校からは、卒業証書は出せませんが、このあたりで自主的に卒業してくださいと(笑)。だから、一般的な就活はできなかった。

本誌 自主卒業というとカッコイイですが、要は中退されたんですね。

神瀬 はい。そのとおりでございます(笑)。「フリーター」や「ハケン」という言葉も概念もまだ一般的には浸透していなかった時代。このままでは、ただの敗残者です。絶対に正社員にならんと、社会非適格者になってしまう。そんな意識はあったんですね。
で、アルバイトをしていたコンビニやレンタルビデオ屋のオーナーさんに相談した。地元のネジ工場のおやじさんにも相談したなぁ。

本誌 ネジ工場ですか?

神瀬 私、大学時代軽音部で、シンセサイザーにのめり込んでバンド活動に励んでいたんです。そのネジ工場のおやじさんも音楽好き。「地元の音楽活動手伝ってくれへんか」と頼まれたのがきっかけで、付き合いがあったんですね。その3人の大人の方に「じつは大学を中退してしまいました。つきましては、就職の相談にのってくれませんか」と。3人とも、「そんならうちに来たらええ」。2日で内定3つとって、就活完了(笑)!

本誌 (笑)内定率100%。完璧じゃないですか。それで、どこに就職したんですか?

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■32歳で初のリアル就活。ブラック企業も経験。

神瀬 レンタルビデオ屋さんで、正社員になりました。

本誌 そこに決めた理由は何ですか?

神瀬 当時のオーナーが7千万円くらいかけて、新店舗をオープンするという。そこはビデオだけじゃなくCDも扱うから、神瀬、店長やってみないかと。私は、とにかく音楽バカでしたから、「CDがあるんやったら、おもしろそうや」と二つ返事で引き受けました。26歳の新入社員。給料はめちゃ安かったけど、仕事は、楽しかったなぁ。

本誌 レンタルビデオ屋では、何年働いたんですか?

神瀬 足掛け5年働いたんですが、思うところがあって、辞めました。店の売上も好調で、辞めるときには、給料も3倍位になっていました。

本誌 思うところというと・・・?

神瀬 このままいったら、一生店長のまま。ちゃんとスーツを着て仕事がしたいなと思ったんです。

本誌 そんなに売上を上げている店長を、すんなり辞めさせてくれたんですか?

神瀬 何といっても、私を社会人にしてくれた恩人です。正直に自分の気持を伝えたら、快く送り出してくれた。今から振りかえると、節目節目で私は人の縁に恵まれてきたと思います。いい人に巡りあって、いっぱい助けてもらった。

本誌 次の仕事のあてはあったんですか?

神瀬 大学の軽音の関係で、コミュニティFMを手伝ったり、CDの制作現場でアシスタントしたり、音楽にはずっと関わっていたんです。そこで、音楽の仕事を紹介してやろう、と言われて。

本誌 次は念願の音楽業界だったんですね。

神瀬 それが、その話が立ち消えになってしまい、これはまずいぞ、と。そこで、生まれて初めて、世間でいうところの「就活」を始めたんです。

本誌 32歳の転職活動。結果はいかがでしたか?

神瀬 もう、ボロクソでございます。いちおう工学部中退なので、ちっちゃなメーカー系をまわったんですが、「お前なんか採るんやったら、18歳の工業高卒を採ったほうがいい」と面と向かって言われましたからね。

本誌 それはキツイですね。

神瀬 でも、言ってることは、まったくの正論。自分が社長でも「32歳、経験なし」なんて冗談でも採用しません(笑)。それから紆余曲折あって、通信機器を扱っている、営業会社に潜り込んだんです。携帯電話が出始めの頃で、そのセールスが主な仕事ですね。まぁ、その会社が今で言う、超ブラック企業でね(笑)。不動産会社の子会社だったんですが、100人入ったら半年で99人は辞めるという、とんでもない会社。営業まわりして夜8時9時に帰社するでしょう。「何本売れたんじゃ」「ゼロです」「何しに帰ってきたんじゃ、ボケ!今から飛び込み営業行かんかい!」もう深夜12時くらいまで、ピンポンして。いい迷惑ですよね(笑)。

本誌 メチャクチャですね。そこは長く続けられたんですか?

神瀬 アホバカ言われ続けるの、悔しいじゃないですか。営業のセンスはよかったみたいで、どんどん数字はあがってきたんです。でも、半年たった頃、案の定、体を壊して、辞めました。

■新設の営業部を売上30億に。ところが・・・。

本誌 いやぁ。それは、お疲れ様でした、というか、大変でしたね。それで、無職に・・・?

神瀬 運がいいことに、辞めてすぐ、大学生に対するプロモーション会社をやっていた先輩が「手伝わないか」と声かけてくれたんです。大学生へ就職情報を届けるための
情報を集め、それを元にいろんなビジネスを展開している会社でした。

その社長の周りにも「学生起業1期生」みたいな方が多く事業拡大の可能性はあるんじゃないかと思ったわけです。

私はダイレクトメールの発送代行の部隊に配属さましれた。運が良かったのか、新設する東京支社の営業部長を任されることになったんです。ゼロからの立ち上げですから、スタッフを集めなきゃいけない。でも募集職種に、ダイレクトメールの発送代行業務と書いても、人材が集まるわけがない。そこで、広告代理店の営業事務のアルバイト募集って、書いたんです。いま、こんなことしたら、叱られますけど。面接して行けそうやなと思った若者には「じつは、こういう営業マンの仕事なんや。正社員で、やってみないか」と正直に伝えた。採用は難しかったけれど、何人かが入社してくれた。

本誌 神瀬さんも、相当ブラックですね(笑)。

神瀬 営業の仕事は、まずテレアポから。社員には、つきっきりでやり方教えて。でも、延々、何百件も電話かけ続け、断られ続ける作業。自分でも経験しているんですが、これがかなりしんどい。だから一計を案じたわけです。まず、50分電話かけたら10分休憩。残業はさせない。目標達成できなくても構わない。でも、アポがとれたら、いっしょにお客さんのところに連れて行ってやると。アポとると、外に出ることができる。これはテレアポ部隊にとっては、うれしいご褒美なんですね。2時間位、電話地獄から開放されるわけですから。でも、ただ連れて行くだけでは、仕事にならない。彼らに課したミッションは「お客さんとのやりとりをぜんぶメモすること」。そして帰社後、本社の社長に送る営業日報に、詳しくそのメモを記入させるんです。

本誌 そのココロは?

神瀬 こんなことに困ってるん違うかな?ここを提案したら、いいんじゃないかな?など、お客さまとの会話の中に、いろんなヒントがいっぱい詰まっている。付き合いのない営業マンから「困ってることありませんか?」とたずねられて、「はいはい、ちょうどこれこれに困っているところなんです」なんて気前のいいお客さんはどこにもいない。だから、突破口を探る上で、お客さんとの会話メモはすごく重要なんです。だからここは徹底的に厳しくやった。メモをとり忘れた営業マンには「お客さんにお頭下げて、もう一度話を聞かせてもらってこい!」。そして、営業日報が完璧に仕上がるまで帰ることは許さない。

本誌 でも昔の営業マンは、みんなそういう経験乗り越えて一流になっていってるんですよね。

神瀬 そうなんです。飴と鞭をちゃんと使い分けていかないと、社会の中で闘っていける人間は育たない。このときの若手は、みんなめちゃくちゃ成長しましたね。
ダイレクトメールの場合、ライバルは印刷業界から転職してきた営業マン。印刷のノウハウを武器に、お客さんを取り込んでいく。我々はそこでは太刀打ち出来ないから、「入力」というアナログをデジタルに変えるプロセスでいかに安く、確実に相手にはがきが届くか、をポイントにして闘ったんです。どんなに上手く印刷できても、ターゲットに届かなきゃ効果は出ないですから。そういう風に、お客さまのニーズを吸い上げて、いまでいうPDCAサイクルをきちんと回していくことを徹底した。

本誌 優秀な営業部長だ。

神瀬 そうでしょ(笑)。採用に関しても、10の能力の人材が10人いるとするでしょう。本社は、今の人材じゃ物足りないから、50の能力の人間を採用しろと言ってくる。それに対して私は、50の人間は入社してもすぐに辞めます。だって、どの会社に行っても通用するから、この会社にいる理由がない。だったら、いまいる10の人間を、全員12や13に引き上げたほうが、人件費は増やさないで、売上を増やすことができると。サッカーだって、スーパースターがひとり入団したからといって、優勝できるとはとは限らない。現状のポテンシャルを上げていくほうが、可能性は高いと思ったんです。

本誌 しごく正論ですね。企業の採用活動にも、同じことは当てはまりますよね。

神瀬 採用の究極の目的は、2つ。売上をぐんと伸ばして会社に利益をもたらす人材かひとりで何人分もの仕事をこなして人件費が削減できる人材を採用すること。売上を上げるか、コストを減らすか。その2つに集約できるんですね。そうこうしていたら、売上がどんどん伸びてきて、年間売上が30億くらいになってきた。すると本社から、お前は数字つくらなくていいから、良い人材を育てろと。言うとおりに人材育成に注力していたら、数字をつくらない管理職はいらないと言われた。「アホか、こいつ」と思ったけれど、大人だから口には出しません(笑)。そうですか、それでは辞めさせていただきます、と

本誌 本社は安い給料の若手営業マンがどんどん売上あげるものだから、神瀬さんがコストだと勘違いしたんですね。

神瀬 まぁ、そういうことです。でも、チームの指揮とる人間が必要やということに気づかなかったんです。

■学生に育てられたって、どういうこと?

本誌 そのときに学生たちと接していたことが、現在の仕事につながっているのですか?

神瀬 それが、面白いことに、まったく関係がなくて(笑)。前の会社の後輩が、神戸に面白い人がいるからあってみないかと。元リクルートの方で、学生に就活を教えているんだと。へぇ、そんな仕事があるんや、と会いに行ったら、大学生の研修に同行しないかと誘われたんです。ノコノコと会場についていったら、いきなり、「神瀬くん、なんでもいいから15分くらいしゃべってみなさい」。そんなこと言われてもね。就活のことも、就職のこともわかれへんし、ましてや大学中退やし(笑)。仕方ないから、今ここでしゃべっているたような、自分が体験してきた仕事の話をおもしろおかしくはなしたら、これが大ウケしたんです。

本誌 神瀬さん、ふつうに喋っていても、かなりおもしろいですから(笑)。

神瀬 人を漫才師みたいに・・・。でも、はなしがおもしろいと思ってくれるのは、コミュニケーションする上ですごくありがたいことなんです。つまらないはなしを延々続ける人といっしょに、お酒を飲むの苦痛でしょ。

本誌 たしかに。で、その会社に入ってキャリアコンサルタントになったんですか?

神瀬 その方には、いまもずっとお世話になっているのですが、会社に入ったわけではないんです。大学の授業でしゃべった後、何人かの学生がエントリーシートや面接のことで神瀬さんの意見を聞きたいとやってきた。こんな私でよかったら、いいよ。と学生の相談にのるようになったんです。すると、そのなかからANAのCAやエルメスの正社員、スターバックスの第一期生など、続々と就職の報告が来たんです。

本誌 それはすごい。

神瀬 HR業界って、リクルートや学生援護会のOBばかりで構成されているから、そこ出身じゃないといけないと思っていたのだけれど、こんな私でも実績が出る。もしかしたら、この業界は参入障壁が低いのではないかと思った。

本誌 特殊な能力が必要だと思いがちですが、そうではなかったんですね。

神瀬 必要なのは、ノウハウではなく、学生が社会にでるための準備を一緒にするんだと寄り添っていく気持ち。だから、私がアドバイスする視点はただひとつ。「社会人だったらこう書くで」「社会人だったらこうするで」。そのスタイルでやっていたら、バンバン結果がでる。翌年、立命館の学生から「就活教えてくれるらしいですね」と問い合わせがあった。「ぜひ、塾にしてください。20人学生集めたらやってくれますか?」「授業料はこの金額でいいですか?」と。学生さんにいわれるままはじめたのが『就活ワークス』という就活塾なんです(笑)。

本誌 ある意味、顧客である学生さんとの、理想的な関係ですね。

神瀬 そうこうしているうちに、「自己PRの添削セミナーやりませんか?」など、学生さんたちがいろんな企画を立ててくれて、イベントも始めるようになったんです。

本誌 神瀬さんは、まさに学生さんに育ててもらっている。

神瀬 ほんまそうです。現在の私があるのは、学生さんたちのおかげです。

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■企業が金を出している情報が、フェアであるわけはない。

本誌 神瀬さんの塾では、学生さんから授業料をいただいて教えているんですよね。

神瀬 はい。でも、業界からは、大ヒンシュク。だいぶ反発くらいましたよ。「お前のところ、学生から金とるのか」って。でもね、合説だろうが、ナビだろうが、金出しているのは誰か、って考えてみて。どれも、企業がお金だして、自分たちの情報を学生に伝える仕組み。そんなもの、バイアスがかからないわけがない。自分に都合の悪いこというために、お金払う人はいないから。私は自分の知っていること、経験してきたことを学生さんたちに、正直に伝えたいから、お金をもらう。そのほうがフェア。

本誌 たしかに、新卒採用に関して言えば、企業と学生の関係はアンフェアな気がします。

神瀬 小学校入試から塾のある世の中。人生でもっとも重要な就職に塾がなくてどうすんねん。そうでしょう。だから私のところは、最初からB to C。カスタマーは、就活生です。初期の頃は、就活本のイケてなさをあざ笑い、キャリアセンターの対応のマズさに爆笑し、人事は何見とんねん、と放言はいていたら、ある日突然、とある会社の人事から連絡があった。文句言われるのかと、身構えていたら・・・「採用手伝ってくれませんか」。世の中、何が起こるかわからない(笑)。

本誌 その企業さんも勇気ありますよね。

神瀬 企業側の話を聞いてみると、学生は、就活を難しいものだと思っている。企業は、学生が何を考えているかわからないと思っている。互いに交わる機会がほとんどないんですね。企業の人事担当者も仕事だから、毎年ちゃんと成果を出さないといけない。企業さんとのつきあいが深まれば深まるほど、採用ってつくづく大変な仕事だと思うようになって、最近では舌鋒も湿りがちですわ(笑)。

本誌 これで湿っているんだったら、全盛期の毒舌はどんなに激しいものだったのか・・・(笑)。

神瀬 その後知り合いになった企業の方からは「神瀬さんのところの学生は、通しやすくもあり、落としやすくもある」と言われるようになった。これ、私にとっては最大の賛辞なんです。

本誌 なるほど。学生の素顔がちゃんと見えてるってことですもんね。ミスマッチが防げるから、採用担当者としてもありがたいんですね。

■就活のノウハウを身につけても、人生の役に立たない。

神瀬 【就活ワークス】の活動を始めた頃、塾生から「神瀬さんの話があまりにおもしろいんで、学校でもやってもらえませんか」と相談があったんで、いいよ、と快諾した。彼は、自校のキャリアセンターに提案にいったんです。すると、「くだらないことするな!」。

本誌 外部の人間に、自分たちの仕事やらせるわけにはいかない、と防衛本能が働いたんですかね。

神瀬 当時、大学では「自己PRには、失敗して、立ち直った話を書きなさい」と教えていた。だからみんな同じような話を書いていたんです。ステレオタイプにそんな話を読まされてもね。

本誌 確かに。それでは、自己PRではなく、立ち直り自慢大会になってしまう(笑)。

神瀬 理由は簡単なんです。最近では民間企業から大学教授へという人も増えてきましたが、ほとんどの大学の先生たちは就活を経験したことがないんです。就活をしたこともなければ、企業側の人事担当者として新卒採用をしたこともない。だからアドバイスできるはずないんです、と学生には話すんです。すると「そんなこと考えたこともなかった」(笑)。

本誌 先生のことを、一番身近な社会人だと思ってしまうのも仕方ないですね。

神瀬 大学生時代の社会人のイメージって、自分の親や親戚、バイト先の先輩、そして先生くらいまで。ほんとうの社会と接する機会は、ほとんどないんだから仕方ないよね。

本誌 でも、大手の就活産業が、SPA対策やらESの添削やら、面接対策やら、いろんな「やらねば」で学生にプレッシャーをかけているのに対して、神瀬さんは全く逆を行ってるような気がします。

神瀬 就活のためのノウハウをどんなに詰め込んだって、将来なんの役にも立ちません。就活のための就活をやって、よろこぶのは就活産業だけ。そんなことより、社会人ってこういうふうに考えて行動するんだなって、社会の常識を身につけていったほうが、ずっと彼らのためになる。就活ノウハウでは、社会と学生の溝は、決して埋まりません。

■学生さんの人生を応援するのが、わたしの仕事。

本誌 神瀬さんの塾を巣立っていった学生で、印象深い学生はいますか?

神瀬 いっぱいいるよ。みんな、ちゃんとそれぞれのドラマ作って、社会に出て行ってます。あ、そういえばこんな学生もいました。彼は、子供の頃からサッカーをやっていた。小学生で日本代表。(おおすごい!)中学生では近畿代表。(あれっ?)高校生ではJリーグのユースを落ちこぼれて、(おやおや)高校のサッカー部で挫折してサッカーやめちゃった。順調な右肩下がりの人生。そして、入学した大学はいわゆる超下位校。で、塾にやってきて「こんな僕でも、就活していいんですか?」。なにゆうとんねん。お前の今の話だけでも、十分面白い。面接で笑いが取れる。自信持って行ってこい!と送り出したら、大手食品目メーカーの選考を、どんどん勝ち残っていった。最終面接の前に「僕以外は、みんな一流校のひとばかり。どうしたらいいんですか?」。

本誌 そこで、神瀬さんはどうアドバイスされたんですか?

神瀬 「御社に私の大学の先輩はひとりも採用されたことがありません。私が大学の新しい歴史を作りますから、ぜひ採用して下さい」と言ってこい、と。でも、そんなこと言えません、って悩んでいるから、「言えんかったら、落ちる!」。

本誌 その学生はどうしたんですか?

神瀬 ちゃんと面接で、そう言いました。いま、その食品メーカーで活躍してますよ。

本誌 おおっ!!すばらしい。

神瀬 そういうドラマみたいなことが、いっぱいあるんですよ。だって、学生さんって、まっさらで可能性のカタマリでしょう。でも、自分ではそこに気づいていない。社会に出たことないんだから、仕方ないんです。私たちは、そこをちょっと押してあげるだけ。
なんで大学中退で、まともに就職してないお前が、就活を語るんや。と言われますけど、マイナーでインディーな人生を歩んできたからこそ、身についたことがいっぱいある。就活は、ハシカみたいなものやと思うんです。うまく行った人は、みんなかかったこと忘れてしまう。ちょっとした挫折なんか、記憶に残ってないんです。

本誌 確かにそうかもしれません。神瀬さんの話聞いてると、就活を応援してるんじゃなくて、学生さんの人生を応援しているような気がしてきました。

神瀬 私は、就活は大人入門やと思ってる。みんながいっぺんに同じように大人にならなくてもいい。たとえば、新聞。みんな就活はじめたら新聞読みなさいって言われて新聞読み始める。だけど、真剣に読んでない。去年(2013年)の12月1日、『就活成功塾』キックオフの日に、伊藤忠商事がドールバナナを買収した記事が載っていたんです。学生たちも初日だから、やる気満々。「総合商社に興味ある人?」って聞いたら、みんな「はいっ!」って手を上げる。「この記事、読んだ人?」って聞いたら、100人中1人。今日が伊藤忠商事の最終面接の日じゃなくて、よかったな(笑)。それで、みんなが新聞精読するようになるとは思わない。翌日5、6人が読んでくれればいい。徐々に気づいて行動してくれればいいんです。砂漠に水を撒くようなものやけど、それが私の仕事やと思っています。

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