「正解主義」の呪縛を解いて、レアカードになれ!

藤原和博

絶対にやりたい仕事は、“自分を安売りしろ!”

中学の「公民」の教科書を読んだのだけれど、これがおそろしくつまらない。こんな教科書で学んだら、子どもたちが世の中嫌いになってしまう。「日本中に小中合わせて約3万校の義務教育機関がある。そのなかのたった1校をマネジメントの力で変えてみせる。」そこにマスコミを入れてばんばんPRすれば、「やれば変わるじゃない。いままでやらなかっただけだ」と。校長が変われば、学校は必ず変わることを証明したかったんだ。そして、2003年47歳で杉並区立和田中学校の校長になった。東京都では義務教育機関における初の民間人校長だと話題になったので記憶にある方も多いと思う。校長というのは、インディペンデントな(独立した)存在で、実はかなりのことをやろうと思えば出来る立場。ぼくも、和田中では、「[よのなか]科」や「夜スペ」…など、様々な取り組みを行い、結果としてマネジメントの力で学校を再生した。(そんなぼくの取り組みについては[よのなかnet]をのぞいてみてください。)

校長になって、もちろん収入は激減した。でもぼくは「絶対にやりたい仕事を取りに行く時は、自分を安売りしろ」とみんなに言っている。大阪府知事(当時)の橋下さんから依頼されて、大阪の教育改革をやることになった時も、「無償なら引き受けます」。大阪の府政だから、うるさがたがいろいろ言ってくる。「おれは無償でやっている」と言ったらみんな黙ってしまった。

学生のうちに、「正解主義」のバランスをくずせ。

ぼくがリクルートに入社したのは、事故みたいなものだけれど、これも時の縁。それが大切だと思うんだ。「正解主義」の呪縛があると、自分にとって正解の会社があるんじゃないかといつまでも探してしまう。迷いに迷って、結局、どこにも行けないなんてことになったら、不幸でしょう。企業は生き物だから日々刻々と姿を変える。だから、企業を分析するなんて意味が無い。ひとことでいえば、「どこへ行っても同じだよ」。正解だったかどうかは、10年後に決まる。どんな会社に入っても、それを自分の「納得解」に昇華できるかどうか。それは入社後に、どんな姿勢で仕事に向かうかにかかっているんだ。

だから、学生時代に大切なことは、「正解主義」というバランス感覚をくずして、バカになってみること。いまは選択肢が多いから余計に「正解」を探したくなるんじゃないかな。「正解主義」のたがをはずすいちばんいい方法は、世界の最貧国といわれるバングラデシュのような国に行ってみること。もしくは石巻のような被災地に。すべてを失ってしまった大いなる欠落感から何が生まれてくるのか。そこから、新しい文化、新しいシステムを生み出そうとする力を肌で感じることが大切だと思う。いま、世界をリードするような企業は、こぞってそういう場所に社員を送り込んでいる。

「正解主義」が不幸をつくる。

いまアメリカではTeach of AmericaというNGOが大きなムーブメントになっている。ハーバードやスタンフォードを卒業して、最先端企業Appleやマッキンゼーに入社が決まった人たちが、こぞってそこに行く。そのNGOで2年間、アメリカの最貧地区の子どもたちの勉強をみているんだ。企業側も、その間入社を待ってくれる。なぜそんなことするかというと、自社で社員教育するよりずっと成長するから。その半数近くは、企業に帰らないで、そのまま教育の世界に入ってしまうそうなんだけど、大きな目で見れば国家の財産につながる国家レベルの投資だと考えることもできるよね。

大学のキャリアセンターも、そろそろ「正解主義」から「修正主義」に舵を切らないと、不幸な学生をどんどんつくっていくことになる。正しい服装。正しいエントリーシートの書き方。正しい面接。みんなおんなじ方向に向かせたら、不幸になる確率は高くなる。今後、ユニクロのように独自ルールで採用するという企業はどんどん出てくるだろうね。国際企業は国際ルールで戦わないと生き残れない。きっと新卒一斉採用なんて、なくなっちゃうんじゃないかな。

若者たちよ、「レアカード」になれ!

いかに有利に就職するか。早く内定をとるか。自分にあった会社を見つけるか。
そんなのわかるわけはない。学生の分際で企業を見極めようなんて、そもそもまちがいなんだ。そして、就職にかぎらず、大事なことは、いろんな人に相談しちゃダメ。相談すればするほど、それを上手く行かなかった時の言い訳にしちゃうからね。

低位安定を豊かだと思う人には、何も言うことはないけれど、ほんとうに人生を豊かにしたいなら、
「正解主義⇒修正主義」「前例主義⇒先例主義(自分が先例になる)」「事なかれ主義⇒事あれ主義」

こんな風に逆張りを勧めるね。「低位安定=沈滞感」。みんなと同じ道を進んでも、先に行った人がおいしいところは全部持って行ってる。違う道には危険もあるかもしれないけれど、自分が先例になれるチャンスが転がってる。

最後にひとこと言っておくよ。成功したかったら「レアカード」になりなさい。
カードゲームも「レアカード」ほど、高価値でやり取りされるでしょ。ビジネスも人生も、おなじこと。レアカードになるためのメソッドはあるかって?また、正解主義が目を出してきたね。誰もがなれるマニュアルはないけれど、客観的な数字の方程式はあって、まず100分の1の人間になりなさい。そして1万分の1の人間になりなさい。そして、1億分の1の人間になれたら…。

人間には可能性が眠ってるんだから、「やる」か「やらない」なら、「やる」ほうの人間になったほうが、人生は圧倒的に楽しいと思うよ。今年9月頃の予定で、そんなことまとめた本出すから、ぜひ読んでみて(笑)。