【採用サミット】

学生には絶対に言わない、企業の本当の採用基準。

エントリーシート情報や面接での合否はどうやって決まるのか? 学生であれば誰もが知りたい情報だが、就職活動中にそれを知る機会は一切ない。採用という仕事に携わったことのある社会人に、普段は絶対に語られることのない「本当の選考基準」を聞いてみた。

■参加者

村田(仮名・47歳)
インフラ系企業の採用担当。入社直後から現在まで、一貫して採用の仕事に関わっている大ベテラン。
上野(仮名・40歳)
商社の人事部に勤務。以前、採用担当を4年ほど経験。現在は人事部の他セクションに所属。
正木(仮名・43歳)
メディア・情報サービス系企業の採用担当。入社後は現場で働いていたが、数年前に本社人事部に異動。現在は採用と教育の仕事に携わる。

■読まないで合否を決めるエントリーシートがある!?

本誌
学生が就職活動で最初にぶつかる壁がエントリーシートですよね。皆さんの会社では、どこで合否を決めているんですか?

村田
うちの会社は、会社説明会でエントリーシートを配布するのですが、回答の中に、会社説明会で私が話した情報のなかから、会社案内やホームページには書かれていないことを1つでもピックアップしていれば合格にしています。その程度の基準なんですけど毎年、3割の学生が不合格になっちゃうんですよね。
別に落としたくてエントリーシートを導入しているわけじゃない。履歴書では表現しきれない「その人らしさ」みたいなものが分かる面接の材料として提出を求めている。だから実は、説明会の場で「設問には全部答えるように。ひとつでも空白で出したら落ちるよ」とまで教えているんです。それでも空白で出してくる学生がいる。これは無条件に落とします。

上野
伝える内容よりも伝える力があるかどうかを見たいですね。直接話して伝えられる人数は限られるけれど、多くの人と考えを共有するためには、論理的な思考力も含めて「書く力」が求められますから。
あと、ときどき奇をてらった内容を書いてくる人がいる。個人的にはそういう飛び道具は好きではありません。

正木
奇をてらったエントリーシート(笑)。うちにも多いです。ただ、そういったもので感心するものはあまりない。そもそも涙が出るほど素晴らしいエントリーシートなんてこれまで見たことないですけど。
うちの会社は志望者を筆記試験の定員まで絞り込むツールとして使っています。だから、少々の粗があっても、どこかいいところを見つけてあげて合格させるようにしてますね。うちの会社でエントリーシート選考に落ちた人は、根本から就活を考え直したほうがいいかなと(笑)。

あと、こちらの指示を守れない学生って多くないですか? 「エントリーシートはクリップでとめること」って指示しても、ホッチキスでとめてたり、所定の私書箱宛じゃなくて本社に送って来る。ひどいのになると写真貼るの忘れたとか……。さすがにこういうのは、いくら中身がよくても合格にはできないですね。

村田
それって約束事が守れないってことですもんね。うちの会社でも約束が守れない人を合格にはできません。

正木
別に難しいことを要求してるわけじゃないんです。自分の人生がかかっている書類を提出する際に、簡単な確認作業も怠って、自分だけの判断基準で進めてしまうのって、脇が甘いと言われてもしょうがないですよ。

上野
同感ですね。「当たり前のことを当たり前にやる」という基本動作の話だと思います。

村田
弊社の場合だって「空白をつくるな」と宣言しているにも関わらず、空白を残して提出してくる学生。実は不合格者の半数、全体の15%もいるんですよ! 学生も同じ時期に多くの企業にエントリーシートを提出しなければならないので、締め切り直前の頃には私の説明なんて忘れてしまうんでしょうけどね。

正木
就活中の学生さんは、人生でいちばん忙しくて大変な時間をすごしていると感じているかもしれません。でも、「入社して仕事が始まったら、こんなもんじゃないんだぞ!」と言ってあげたい(笑)。忙しいのを言い訳にして欲しくないです。

全員
まったく同感です!

■志望動機の完成度と合否の関係

本誌
志望動機ってどの会社の面接でも必ず聞かれますが、やっぱりよい志望動機が言えると合格するんですか。

村田
志望度が強いのは嬉しいですけど、いくら強くても合格にはなりませんね。そもそも私が面接で見ているのは、その人がうちの会社で働いていることがイメージできるかどうか。もっと言えば、○○部署の○○さんの部下にしたら活躍してくれそうとか、この学生が○○さんからこんなことを学べば新しい価値を生みだしてくれそうだな、とか学生さんと話しながら想像を巡らせています。

本誌
具体的にイメージできる人は、合格するのですか。

村田
ここが難しいところで、特定の部署についてだけイメージできてもダメなんです。「こっちがもし合わなかったらこっちの部署でも活躍できるかもな」と複数の部署や職種でイメージできると、入社後ある程度の確率で活躍できるだろうと安心できるんです。

上野
では、社内で一定の評価基準をつくって、それを満たしているかどうかをチェックするような面接をやってるっていうわけではないんですね?

村田
しませんね。どこで働いてもらったら我が社が発展しそうかという観点だけです。
だから10年前に入社した人間が今年受けに来ても絶対合格しないと思います。
毎年、会社が必要としている人材像はおなじとはかぎりませんから。

正木
じゃあ、「それでも面接で志望動機を聞く理由はどこにあるんです?」っていう学生からの声も聞こえてきそうですけど(笑)。その辺はどのように考えたらいいんでしょう。

村田
うちの会社ではコミュニケーションをうまくとるための、アイスブレイクのようなものですね。まず考えてきたことを吐き出すと落ち着きますよね。必死で準備してきた(志望動機を考えてきた)努力を認めてあげる意味で聞いてます。

上野
志望動機は、完全に準備してきていますよね。準備すること自体が悪いことではないけど、たまに、志望動機を聞いた瞬間に、声色やテンポが変わって、テープを流してるんじゃないかと思うようによどみなく話す人がいます。緊張しているので難しいのかもしれませんが、自然なコミュニケーションにならないケースがあるので、私は志望動機を聞く時間は短くしています。会話の中で見えたその人のエッセンスに注目して、どうしてそう思ったのかを深堀して聞いていく。志望動機の良し悪しだけで評価が決まることなんてないですね。私だって、「海外行きたい=商社」っていう安直な志望動機でしたもん(笑)。

本誌
それでも「すごい!」って感じる志望動機に出会ったことはありますか。

上野
いますね。よく調べてるなって人が。ほとんどの学生は、受ける会社の「企業研究」をするじゃないですか。それは当然だと思うのですが、人によっては、経済の流れの中でメーカー、商社、流通業があって、その関係性や役割の違いをきちんと研究した上で、「やっぱり商社」と選んでいる学生の話を聞くとすごいなと思います。地に足が着いているなという印象。各社に合わせて作り込むのではなくて「社会全体の中でその会社の役割は何か、それを面白そうだと思えるか」って観点で研究してるんですよね、そういう人は。