【採用サミット】

学生には絶対に言わない、企業の本当の採用基準。

■内定を多く取れる学生が、ほんとうに優秀なのか?

本誌
「この学生は、どこの企業でも採用されるだろうな」という優秀な人材ってどんな人ですか。

村田
引き出しの多さと、その内容の濃さかな。

正木
引き出しの多さというのは分かりますね。うちの場合は、スペシャリストを求める側面もあるので、引き出しの数は少なくても底が深い人でもいいですけど。でも、どんなに優秀だなと思っても、「こいつは一緒に働きたくないな~」と感じたら評価は大きく下がりますね。「こんなやつ面倒みたくないな」って思う人は合格にはしないです。自分が面倒みたくもないような人間を現場に押しつけたら怒られちゃいますもん(笑)。

上野
優秀な人…いますけど、そもそも「内定をたくさんもらうこと=優秀」という定義に違和感がありますね。

正木
同感です。内定をたくさんもらう人に共通しているのは、「面接が得意」ということだけ。今の就職活動というルールの中で、上手く立ち回れる器用さがあるってぐらいですよね。内定の数だけで評価は決まりません。入社して活躍している社員と、学生時代に獲得した内定の数ってなんの相関関係もないですから。内定の多さって就活の時期は自慢できることかもしれないけど、入社した時点でリセットされてゼロになる。学生にとって就職はひとつのゴールだと思っているかもしれないけれど、企業側の採用からみると、ヨーイドンのスタートに立つ権利を与えただけなんです。

上野
そうなんです。私も採用した社員の「採用時の評価の差」と「入社数年後の評価の差」に相関関係があるかどうか、随分前に調べたことがあるんです。結果、あまり相関関係はなかった。きっと内定をたくさん取れるかどうかは、採用段階ではちょっとした差なんですよね。入社後配属された部署でどんな先輩に出会ったかとか、どんな姿勢で仕事に取り組んだかで差がでるんでしょうね。

正木
新卒採用は「将来成長するポテンシャルがあるであろう」というぐらいの評価基準ですからね。入社後、誰とどんな仕事をするかで大きく変わる。採用時の評価がずっと続くことなんて、ほとんどあり得ないです。プロ野球なんかと同じ。ドラフト1位で入団した選手だけが良い成績を残すとは限らない。

村田
自分が採用した人で「だまされた!」という経験はいっぱいありました。たとえば、SPIの偏差値が80あった社員。会社史上最高に頭がよいと評価されて入社した人間です。
企業研究も完璧で面接官の評価も満点。でも、入社後はまったく活躍できなかった。採用担当者としては、すごく悔しい。なぜだろうって、ずっと考えてました。

ある時、彼は「社内の評価は低いけど、資格取得のスピードと数は同期の中でもダントツだ」という事実を見て、気づいたんです。「答えのあるものを最短で導きだすのは得意だけど、答えがない問題に取り組むのが苦手な人間だったんだ」と。彼の場合、お得意様からちょっと無理そうな要望をいただいた時、その場で「それはできません」と言って帰ってきていたそうです。お得意様も無理は百も承知で、どうにかしてできる方法がないかを一緒に考えてほしいと言っているんですよね。でも、計算上は不可能だから、できないと答えてしまう。応用が効かないんですよ。仕事のほとんどは、答えのない問いをもらって、試行錯誤していくこと。常に正解があると思っている人間は、これからの社会では通用しない。

逆に採用段階で評価の低かった人が、イキイキと働いている例もあります。縁故で応募してきて、私も渋々合格を出した社員。しかし、彼は入社後、取引先の人からものすごく可愛がられた。とにかく人柄がいいんです。採用時は基礎能力が低いと評価してましたけど、様々な人から期待され指導されていくうちに、どんどん成果を出していったんですよね。

本誌
失敗経験をも踏まえて、学生の潜在能力を正確に見極めるにはどうしたらいいと思いますか?

村田
100%は見抜けないでしょうね。いや、50%も難しいかも。

正木
自分の打率は、もっと低いかも(笑)。

上野
筆記試験の成績や短時間の面接だけで、人材の適性を判断することはほんとうに難しい。その中で応募者の良さに着目しながら、限られた時間と材料の中でベストな判断をしようと頑張っていますね。

■言いたくても言えない採用の本当

本誌
学生に面と向かっては言えないけど、これだけは伝えておきたいことってありますか?

正木
就活にまつわる「都市伝説」みたいなのってあるじゃないですか。エントリーシートに誤字があると落とされる、修正液は3回までとか。あれって全然信じない方がいいよって言ってあげたい。誤字脱字はないのがベストですが、うちでは誤字があったとしても合格にしている人はいます。他にも、採用実績を見てあきらめてしまうのもやめてほしい。内定者の出身大学を見ると特定の大学に偏る年もあるんですが、その特定の大学からの応募者数が多いってだけなんです。100人単位で応募がある大学と、10人しか応募のない大学とでは、内定者の実績に差が付くのも当然でしょ? それを「学歴フィルター」と言われるのは心外。これはきれいごとでなく本当の話です。

上野
学校の噂は弊社でもあります。○○大学じゃないといけない、と思われている。実はうちの会社、学閥がないんですよ。これ他社の社会人の方に言っても信じてもらえないんですけど、本当にないんです。学生さんたちに言いたいのは、表面的な噂や不確実な情報に流されないでほしい、ということですね。

村田
よく、「私はこうして内定をたくさん取りました」みたいなセミナーがあるでしょう。はっきり言って意味が無いです。その人はたまたまそうやって内定を取れただけ。そんな金太郎飴みたいな人間ばかりじゃ、企業は成長しないんです。私たちも学生さんたち一人ひとりをちゃんと見ていきますから、学生さんたちも飾らず、気張らず、ありのままの20数年間の人生を私たちにぶつけてください。

本誌
みなさん、ありがとうございました。就活には絶対に落ちる条件はあっても、こうすれば受かるというマニュアルなんてないんですよね。噂など信じず、自分を信じて頑張って欲しいですね。